Wednesday, September 12, 2007

911


あの朝もいつものようにテレビをつけた。

テレビを見るのは朝の出勤準備中だけだったので、
事件を知ったのは翌朝だった。

WTCが火事だ、と思った次の瞬間、
映像の中のWTCは崩れ去った。

頭の中が空白になり、
何を考えればいいのか分からなくなった。

当時、私は米系証券会社の社員で、
出社すると、いつもは陽気な米国人の同僚が
泣きそうな顔で情報端末の前に座っていた。

事件の発生を知った彼は、
オフィスにやってきて一晩を情報端末の前で過ごしたそうだ。

WTCにあるオフィスで働いていた知人は、
その朝、たまたま遅刻して、
遅刻ついでにWTCの近所のカフェでコーヒーを飲んでいて助かった。

NYの本社からは当面の一切の出張の見合わせが通達され、
電話には社員を励ますCEOのメッセージが連日のように入った。

ふざけて封筒に白い粉を入れて放置した社員と、
アラブ系の同僚に差別的な言動をした社員が解雇された。

diversity(多様性)と銘打ったセミナーへの参加を義務づけられた。

米国系の金融機関が多数入居していたビルに爆破予告電話があり、
避難騒ぎになった。

ビルに入る際にはID提示と持ち物検査が行われるようになった。

少しずつ、その日の様子が伝わってきた。

助からないと覚悟して、
家族や友人にWTCから別れの電話をかけた人たちの話。

あの朝以来、消息不明になり、
恐らくWTCにいたのだろうと言われている人たちの話。

事故機が突っ込んだのは米国財務省証券のブローカーで、
私もディーラー時代によく取引をしていた会社だった。

一瞬にして本社が消えたと知ったときの気持ちを
東京の社員から聞いた時は声が出なかった。

911から1年後に会社は世界規模で早期退職者を募り、
私はそれに応募して会社を辞めた。

あの出来事がなくても私は会社を辞めてフリーになってたかな。

911の事を考えると、
頭がフリーズしたあのころの感覚がよみがえってくる。

No comments: