何度訪れても飽きることがなく、それどころかここに住みたいと思う気持ちはつのるばかり。
母が里帰り出産したので生まれこそ九州だけど、育ちはずっと横浜。
学校も仕事もほとんど首都圏で過ごしてきたのに、ここがふるさとであるという気持ちを抱いたことがない。横浜を含め、生活圏の湘南や東京まで、好きだし愛着はあるけれど、ふるさとということになると、ピンと来ない。
両親がともに地方出身者で、母などは今となっては人生の大半を横浜で過ごしているにもかかわらず、未だに自分は九州人、と言っていることも一因かもしれない。
自分の先祖が代々、暮らしてきたところ、という『時のつながり』が横浜にはない。
それはうちだけではなく、この当たりのほとんどの家が両親の代が一代目で、昔からずーっと暮らしている一族がほとんどいない。
だから引っ越していく家も結構多い。
成り行きでここに暮らすことになったけれど、代々、家と土地を守っていこうという強い気持ちがないのは我が家だけではないみたい。
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著者は京都で生まれ育ったイラストレータ。
あーなんか、こういうの読むと、つくづく私は無機質な中で育ってきたのだと思う。
数ヶ月ぶりに行くとがらっと変わってしまっている大都市。
新しいものにどん欲で、この間まで行列だったレストランがいつのまにか閉店している。コンセプトによってデザインされた無機質な世界。
昔はそういう中で働き、暮らすことが好きだったけど。
人生の着地点について考えるようになると、
京都のように時が継続している土地で生まれ育ち、
死んでいくのって、どんな感じなんだろうと、
あこがれに似た思いがつのる。
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麻生圭子氏は色々な雑誌などで、京都ネタを書いている人、という認識で、著書を読んでみたいとは特に思わなかったのだけど、読んでみたらとても面白い。
多分、『よそ者(それも首都圏人)』としての目線というか、思考回路がかぶるところが多くのだろう。すいすいと内容が頭に入ってくる。
『ぶぶ漬け伝説』、『一見さんお断り』、そして『いけず』などについての考察や、種明かし(これは実はこういうことみたい)も面白い。
京都の町(四条河原町あたりの)はお世辞にもキレイとは言えない、近代の建造物(京都タワーとか)は悪趣味、という意見にも同意。
それでも暮らしたい京都。
それは時がつながっているから。
著者の極端(と私の目には見える)な昔暮らしって、とても京都風ではあるけれど、京都の人の暮らしかと言うと、多分違うのだと思う。
でも、羨ましいんである。
馴染みのお店や場所について沢山、述べられているけれど、著者の目線というか感受性の豊かさが新鮮で、また訪れるのが楽しみになる。
当分、旅行はできそうもないので、京都本を眺めながら気を紛らわせるこの頃。
アマゾンでさらに2冊、麻生氏の本を注文した。読むのが楽しみ。