コーラス・ラインは舞台をアメリカで数回、日本で四季版を1回、映画を数回、見て、ブロードウェイ・オリジナル・キャスト版のレコードもすり切れるほど聴いたので、自分の頭の中でそれぞれの役のイメージがかなり固まっていて、オーディションによって役柄が絞り込まれていくプロセスがとても面白かった。
何よりも圧倒されるのは舞台に生きる人たちの「本気」。
かなり目立つ役のシーラとキャシーの配役がこれしかない、という落としどころまで粘って、悩んで絞り込まれていく。
シーラ役を最後まで争ったラシェール・ラックは「フォッシー」のオリジナルキャスト版DVDに出演している、とても個性的な女優だけれど、最後のオーディションでは審査員の要望に混乱して精彩に欠く。対する(最終的に役を獲得した)アフリカ系の女優は、一歩足を踏み出した途端にキャラが立ち上がってきて、オーディションという枠を越えてそこにシーラが出現するのだ。鳥肌が立つ瞬間。
そして、これを見るだけでもこの映画を見る価値がはある、と思うのがポール役の役者のオーディションでの演技。審査員を含め、彼の演技を見たほとんどの人は、ポールと彼の両親の悲しみ、やりきれなさを追体験したことだろう。
私はせっかちなので、映画が終わって白黒のタイトルロールになると普通は席を立つのだけれど、この映画を見た時は、呆けたようになって、しばらく立ち上がれなかった。劇場はほぼ満席だったけれど、誰も立ち上がらなかった。タイトルロールが終わり、一瞬の暗闇を経て、場内が明るくなり、『ご来場ありがとうございました』というアナウンスで皆、我々に返った感じ。
ちょっと意義を唱えたいのは歌詞の訳。
特に"What I Did For Love"をラブソングのように訳すのは止めてほしかった。
確かにそのように訳すことも可能だけれど、
あの歌が歌われる場面を理解していれば、ああいう訳にはならないと思うのだけどな。
残念。
「ブロードウェイ♪ブロードウェイ」(原題:Every Little Step)
Friday, November 28, 2008
「ダントツの一位」はありです
ついついやってしまう、重複語ランキングというのを目にしました。
1位 一番最初/一番最後
2位 最後の切り札
3位 ダントツの一位
4位 過半数を超える
5位 被害を被る
5位 不快感を感じる
7位 思いがけないハプニング
8位 返事を返す
9位 射程距離
10位 元旦の朝
まあ、ありがちです。
ただし、「最後の切り札」はOK。
本来の切り札は複数存在することもあり得るもので、
「最後の切り札」はその中でも最も有力な最後の決め手、ということです。
「ダントツの一位」にも意義あり。
ダントツは二位との差を表す言葉で重複語ではないのでは?
僅差の一位とか、程度を表す言葉ではないでしょうか。
僅差と違って、ダントツはトップの時にしか使わないけれど、ダントツはトップだけど、1位=ダントツではないってこと。。
「昨日のレースのダントツは誰だった?」とか言わないでしょう。
「思いがけないハプニング」も、ハプニングを出来事と捉えるならあり。
日本語ではハプニングは「予想外の出来事」というニュアンスが強いのかもしれないですが。
何か結構、微妙なリストだな。
言葉に限らず、作法などに関して、よく実は一般に広く行われていることは間違いで本当はこれが正しい、というような記事やコメントをよく見ます。
私はほとんどの場合、正しい少数派でなく、誤った多数派に入るのですが、じゃあ、正しい知識を得たからといって、それに従うかというと微妙。
誤った多数派に、「あの人、あんなことしてる(言ってる)」と思われるのが怖い。かといって、世界に正しい知識を広めるべく「本当はこれが正しいのよ」と主張するのは面倒だ。そして実は得々と(と見える)そういううんちくを傾ける人々が苦手。感心して耳を傾けることを求められているようなプレッシャーを感じるから。
じゃあ、どうするか、言葉ならなるべく避けて通る。翻訳をやっていると、結果が文字で残るので誤りと分かっていて使うのははばかられる。だけど、正しく使用してもクライアントに「誤った多数派」の用法に訂正されることが多い。面倒はさけましょう、ってことで。
それに誤った使い方があまりにも一般化してしまっている場合、正しい用法だと読んでいて引っかかることも確かです。
作法の場合はその他大勢に従います。
記憶に鮮明な「それは無理」という作法の1つに「正しい茶碗蒸し」の食べ方があります。
茶碗蒸しは汁物に分類されるので、箸でぐりぐりとかき回して固まりを崩し、ずずず、と飲んでいただくのが正しい、のだそうです。具は箸で食べます。でも、結構敷居の高いお店でも茶碗蒸しにはスプーンが添えてあるのが普通だし、器そのものも、直接口をつけて飲むような形じゃない。
日本食は本来、箸ですべて食べられるはずなので、ずずず、といくのが正しいのだろうけど。
でも、作法って結構、見るものによって違うことが書いてあるのですよね。
Monday, November 03, 2008
Sunday, November 02, 2008
A Bloodhoud to Die For
A Bloodhound to Die For (Class G) Virginia Lanier Center Point Pub 2004-11-30 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
"Ten Little Bloodhouds"
"Blind Bloodhoud Justice"
"A Brace Of Bloodhouds"
"A House on Bloodhouds Lane"
"Death In Bloodhoud Red"
と続く、ブラッドハウンドのブリーダー/トレーナー/ハンドラーのJo Beth Siddenシリーズの直近の作品。
地域の警察などの依頼を受け、サーチ&レスキューを行うJo Beth。
作品毎に起きる様々な事件に加えて、米国南部の沼地地帯の独特の文化、様々なサーチ(死体の捜索はサーチに当たる犬の気持ちを深く傷つけるそうだ)、大型犬の犬舎の運営、そしてそれに係わる人々の犬に対する深い愛、そして登場人物の人間関係などが語られ、ぐんぐん引きこまれる。
"~ to die for"とは『命をかける価値のあるもの』、つまり『かけがえのない、素晴らしいもの』を指す。
ここでは文字通り、連れ去られてしまった、Jo Bethが愛して止まないブラッドハウンドを取り返すためなら、命を失ってもいい、という彼女の言葉がタイトルとなっている。
今回は何となく雰囲気的に大円団を迎えた感があり、もう新作が出ないのかが、ちょっと気になるところ。
ペーパーバック版もあり。
残念ながら邦訳版は入手が難しそうだけど、比較的読みやすい英文なので、洋書にチャレンジしたい人にはお勧めかも。
Saturday, November 01, 2008
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