Friday, November 28, 2008

Every Little Step

コーラス・ラインは舞台をアメリカで数回、日本で四季版を1回、映画を数回、見て、ブロードウェイ・オリジナル・キャスト版のレコードもすり切れるほど聴いたので、自分の頭の中でそれぞれの役のイメージがかなり固まっていて、オーディションによって役柄が絞り込まれていくプロセスがとても面白かった。

何よりも圧倒されるのは舞台に生きる人たちの「本気」。

かなり目立つ役のシーラとキャシーの配役がこれしかない、という落としどころまで粘って、悩んで絞り込まれていく。

シーラ役を最後まで争ったラシェール・ラックは「フォッシー」のオリジナルキャスト版DVDに出演している、とても個性的な女優だけれど、最後のオーディションでは審査員の要望に混乱して精彩に欠く。対する(最終的に役を獲得した)アフリカ系の女優は、一歩足を踏み出した途端にキャラが立ち上がってきて、オーディションという枠を越えてそこにシーラが出現するのだ。鳥肌が立つ瞬間。

そして、これを見るだけでもこの映画を見る価値がはある、と思うのがポール役の役者のオーディションでの演技。審査員を含め、彼の演技を見たほとんどの人は、ポールと彼の両親の悲しみ、やりきれなさを追体験したことだろう。

私はせっかちなので、映画が終わって白黒のタイトルロールになると普通は席を立つのだけれど、この映画を見た時は、呆けたようになって、しばらく立ち上がれなかった。劇場はほぼ満席だったけれど、誰も立ち上がらなかった。タイトルロールが終わり、一瞬の暗闇を経て、場内が明るくなり、『ご来場ありがとうございました』というアナウンスで皆、我々に返った感じ。

ちょっと意義を唱えたいのは歌詞の訳。
特に"What I Did For Love"をラブソングのように訳すのは止めてほしかった。
確かにそのように訳すことも可能だけれど、
あの歌が歌われる場面を理解していれば、ああいう訳にはならないと思うのだけどな。

残念。

ブロードウェイ♪ブロードウェイ」(原題:Every Little Step)

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